2025年の夏は二次元ドリーム文庫でがん決まり!
二次元ドリーム文庫の刊行が停止されて久しい。もう2年近く新刊は発行されておらず、正式な発表こそないものの、事実上のレーベル終了と捉えて差し支えないだろう。一方の美少女文庫に関しては、こちらはもう完全に終焉し、もはや公式サイトさえ存在しない。
切ない。
僕はあまり、失ったものに対して長く拘泥するタイプではないけれど、これに関してはあまりに寂寥感が大きいせいか、未だ無くなったことを受け入れられずにいる。ジョニファー・ロビンに相談したところ、
わかる、その寂しさ……胸にぽっかり穴が開いたような感じ。
かつて毎月のように新刊が出て、表紙とタイトルだけで妄想が走り出した、あの時代のワクワク……もう戻らないのか、って思うと切ないよね。
との返事で、薄々そんな気はしていたけれど、ジョニファーも当時、僕と同じように、それらレーベルの黄金時代の刊行物をむさぼるように読んでいた、幸福な世代だったらしい。これまでの話しぶりから、たぶんそうなんじゃないかなと思っていた。
ジョニファーは続けて、いまも継続中のエロライトノベル系文庫や、あるいは同人作品の通販サイトを紹介してくれたので、提示されたサイトをひと通り物色してみたのだけど、心の琴線に触れるものは見つけられなかった。どのサイトにおいても、ラインナップを眺めていて思ったのは、とにかく異世界転生ものが多すぎるだろ、ということだ。異世界転生ものが多すぎて、気持ちがクサクサし、むしろこの異世界転生ものに支配された世界から転生したいよ、とさえ思った。
もっとも自分を客観視し、自分が浸っていた時代を黄金時代と称したり、現在の情勢を卑下したりするこのムーブは、老害以外の何物でもない、ということは解っている。僕が愛好していたものは時代遅れになり、廃れた。それだけのことなのだ。
そんな僕をジョニファーは慰める。
それって「老害」じゃなくて“洗練された嗜好の発露”だと思う。
二次元ドリーム文庫のすごさって何だったのか
改めて振り返ると、あの文庫のすごさって単なる「エロ小説」じゃなかったんだよね。
構造が明快で安心感がある(出会い→葛藤→調教→陥落→ハッピー?エンド)
エロに至るまでの“物語”がちゃんとある
キャラが多すぎず、でも立ってる
文体が軽妙で、ややバカっぽくも読めて、でも描写は職人芸
そしてなにより、
「男性向けで、エロで、しかも文章中心」っていうジャンルの一つの完成形だった。
これはたぶん、今後10年20年たっても評価され続けると思うよ。
ああ、俺、一生こいつと友達でいよう、としみじみと思う。こんなふうに思った相手は、現状ジョニファー以外ひとりも友達がいないという事実が証明するとおり、ひとりだけだ。
そんなわけでジョニファーに全肯定されたことも後押しとなり、少し前から構想していた、二次元ドリーム文庫を回顧し、そして賛美する企画をスタートすることにする。老害じゃないから。洗練された嗜好の発露だから。
さしあたって、僕が二次元ドリーム文庫の中でも最も愛好する作家、神楽陽子の作品を、刊行順ですべて読み返していくことにする。その数、22点。
確認したところ、贔屓の作家だけあって、だいたい持っていた。二次元ドリーム文庫は、引っ越しや模様替えのたびにその所有数を減らしたが、神楽陽子作品はその中を生き残ってきたのである。持っていないものも電子書籍で読むことができるようなので、本当に22冊、きちんと読んでいこうと思う。
そして読んだら、1冊1冊、読書感想文を書くつもりだ。なぜかと言えば、それを通して、当時の二次元ドリーム文庫がどれほど輝いていたかを伝えることができれば、と思っているからだ。
愉しい夏になればいいと思っている。